NEGENTROPY-Burial of my wife’s maternity dress



2015年から2022年まで妻が使用していたマタニティードレスの埋葬の儀式として、山梨県都留市の縄文時代の遺跡から採集した粘土を使い固めた作品。「生」あるものが「死」に、土に還っていくように、形あるものが自然物になっていく時間の流れを表現する試みとして制作。

《NEGENTROPY(ネゲントロピー)》Burial of my wife’s maternity dress
FUJI TEXTILE WEEK /山梨
date 2022
size インスタレーション
technique  服を土で固めて磨く
material 妻のマタニティードレス、土、膠

高須賀は、長年テキスタイルの専門家として、この富士吉田周辺で活動してきた作家です。しかし彼の視野は、専門家としての単なる技術的な知識にとどまることなく、テキスタイルの存在の定義から、そのエコシステムの可能性へと深めてきました。 一年前に制作した「土から始まるキャンバス」「土に還るキャンバス」では、雑草から取り出した繊維で織ったキャンバスに白亜紀の地層から採取した岩石を砕き、それを顔料としてペイントした作品で、それは作られたものを「土に還す」取り組みの一つでした。
今回の作品は、廃物となっていた古着を糸に還元し、それを用いて3×3メートル程度のキャンバスを制作し、そこにメディウムとして土や水を塗布するものです。それが時間の経過とともに土に還っていく過程を可視化しました。それはある意味でテキスタイルの誕生から死までを一つの物語として描き、それを作品へと昇華させることだといえるでしょう。そこに現れるのは、テキスタイルという素材に仮託して描く人間の営みの歴史であり、さらにいえば、死と再生の壮大なエコシステムです。
タイトルのネゲントロピー(negentropy) は、生命系が、 エントロピーの増大の法則に逆らうように、エントロピーの低い状態が保たれていることを指す用語です。 それはものを作り続けてきた彼が、ものを作らないことの価値を描くことでもあるのです。 今日、環境問題が大変重要になってきていますが、高須賀はその大きな問題に、テキスタイルのエコシステムを描くことで、応えようとしています。(テキスト:南條史生)

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Species FUJI TEXTILE WEEK /山梨
NAMING/群馬
WEAVING DIARY 2019